BtoBマーケティングとは、法人向けビジネスを展開する企業が取り組むマーケティングだ。
BtoB企業が顧客拡大を通じて事業成長を狙うのであれば、BtoBマーケティングへの取り組みが欠かせない。
そして、BtoBマーケティングを成功に導くためには、そのセオリーを理解し実践することが、重要だ。
そこで本記事では、
「BtoBマーケティングの全体像を体系的に学びたい」
「BtoBマーケティングで成果を上げるための戦略を知りたい」
「ROI(投資対効果)の高いBtoBマーケティングの手法を知りたい」
といったニーズに応えるべく、BtoBマーケティングの基本から実践的手法まで、網羅的に解説していく。
1.BtoBマーケティングとは
BtoBとは「Business to Business」、すなわち法人対法人の取引を意味する。
BtoB企業が展開するサービスには、以下のようなものがある。
- マーケティング支援サービス
- 名刺管理ツール
- クラウド会計システム
- ビジネスチャットツール
- 勤怠管理システム
BtoBマーケティングとは、こうした法人向けサービスを提供する企業が行うマーケティング手法、およびプロセスのことだ。
全体像について大枠を示せば、以下のような施策のすべてがBtoBマーケティングに包含される。
- 市場調査・市場分析
- 顧客ニーズ調査・分析
- 商品企画・開発
- 広告宣伝・PR活動
- 効果検証
BtoBマーケティングと一口に言っても、その対象領域は広く、深い。
ただしそのプロセスは細分化されているため、一つずつ理解して実践すれば成果につながるはずだ(各プロセスについての詳細は後述)。
2.BtoBマーケティングの特徴
BtoBマーケティングは、企業間の取引を前提とするがゆえに、以下のような特徴をもっている。
- 購買意思決定までのプロセスが多い(予算取り、比較検討、稟議、承認 など)
- 取引金額が大きい
- 購買の関与者が複数存在する(役職者による決裁、経理、法務 など)
- 選定時のROI(投資対効果)に対する評価が重視される(導入効果のシミュレーション など)
BtoBマーケティングでは、上述したBtoBビジネスの特徴に合わせて戦略・戦術を展開していくことが重要だ。
具体的な戦略・戦術の策定方法については、後段で詳しく解説していく。
3.BtoCマーケティングとBtoBマーケティングの違い
BtoC(Business to Customer)マーケティングとは、消費者(個人)に対して自社製品・サービスを提供するためのマーケティング活動を指す。
BtoCマーケティングとBtoBマーケティングのおもな違いは以下の2点だ。
- 対象顧客
- 購買意思決定のプロセス
それぞれの特徴を詳しく比較していこう。
BtoCマーケティング | BtoBマーケティング | |
対象顧客 | 個人 | 法人 |
意思決定プロセス | 少ない | 多段階 |
選定関係者 | 少ない(主に1人) | 多い |
意思決定者 | 少ない(主に1人) | 多い |
検討リードタイム | 短期間 | 長期間 |
選定基準 | 個人的な欲求・感情 | 組織的なROIの向上 |
3.1.BtoCマーケティングの対象顧客と購買意思決定プロセス
BtoCマーケティングの「C」は「Consumer(消費者)」を意味する。
消費者の個人的な欲求や悩み・ニーズに焦点を当てて、興味・関心を高めながら購買につなげていくプロセスだ。
BtoCマーケティングの対象顧客は「個人」であり、購買意思はその「本人」が決定する。
購買意思の決定も、消費者である1個人だけで行うため、リードタイムは短期間となる。
3.2.BtoBマーケティングの対象顧客と購買意思決定プロセス
BtoBマーケティングの対象顧客は「企業」だ。
意思決定は組織で行われるため、担当者個人の感情や主観は排除され、客観的かつ合理的に進められる。
BtoCと違って選定のステップが多く、購買意思決定までに半年〜1年以上かかることも少なくない。
このように、BtoCマーケティングとBtoBマーケティングでは対象顧客と購買意思決定プロセスが大きく異なるため、明確な区別のもと、マーケティング戦略を慎重に検討することが重要だ。
<BtoBにおける購買選定基準の例>
- 提供企業の信頼性
- 製品・サービス性能の信頼度
- 導入効果
- コストの優位性
- 導入実績
- 保守・サポートの手厚さ
- 競合比較
4.BtoBマーケティングの流れ【3ステップ】
ここからは、BtoBマーケティングを運用する具体的な流れをみていこう。
以下の3つのステップに分けて解説する。
- 見込み顧客獲得・育成・評価
- 商談創出・受注
- 顧客維持
ステップ①:見込み顧客獲得・育成・評価
BtoBビジネスにおいて、見込み顧客獲得から商談化に至る一連のプロセスをデマンドジェネレーションと呼ぶ。
デマンドジェレレーションとは「需要創出」を意味する言葉で、以下の3つのプロセスから構成されている。
- リードジェネレーション
- リードナーチャリング
- リードクオリフィケーション
デマンドジェネレーションは、見込み顧客獲得の最適化、営業リソースの効率的な活用、リードに対するROI(投資対効果)向上といった多くのメリットが期待できるため、力を入れて取り組む企業が多い。
定義 | リードの種類 | |
①リードジェネレーション (見込み顧客獲得) |
自社の将来顧客となりうる見込み顧客の個人情報を収集する手段 | MAL (Marketing Accepted Lead) |
②リードナーチャリング (見込み顧客育成) |
リードジェネレーションで収集したリードに対し、自社製品・サービスの興味・関心を高めるために打ち出す施策 | MQL (Marketing Qualified Lead) |
③リードクオリフィケーション (見込み顧客の評価・選別) |
リードナーチャリングを通じて購買意欲が高まったリードを判別し、営業部門への引き渡し可否を評価する行為 | MQL→SQL (Sales Qualified Lead) |
リードジェネレーション(見込み顧客獲得)
リードジェネレーションとは、自社製品・サービスに対する見込み顧客の個人情報(メールアドレスや電話番号など)を収集する活動だ。
具体的には、以下のような施策を通じてリード獲得を目指していく。
- Web広告
- リード獲得広告
- コンテンツSEO
- SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)
- メールマガジン
- ホワイトペーパー・eBook
- セミナー・ウェビナー
- 展示会
- ダイレクトメール(DM)
- オフライン広告
リードジェネレーションの取り組みに関する詳細は、以下の記事で詳しく解説している。
リードナーチャリング(見込み顧客育成)
リードナーチャリングとは、自社の製品・サービスに対するニーズの顕在化を促し、見込み顧客の興味・関心を高めるためのマーケティング活動だ。
具体的には、以下のような施策でリードを育成していく。
- メールマガジン配信
- オウンドメディア運営
- セミナー・ウェビナー
- ケーススタディ・導入事例の紹介
- 動画コンテンツの配信
リードナーチャリングの詳しい方法は、以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてほしい。
リードクオリフィケーション(見込み顧客選別)
リードクオリフィケーションとは、リードナーチャリングによって興味・関心を高められたリードを選別するプロセスだ。
購買意欲があり、商談化する可能性が高いリードを評価していく。
よく使われるリードの評価基準には、以下のものがある。
- 行動情報による評価(Webサイト訪問回数、資料請求や問い合わせ)
- 属性情報による評価(企業規模、業界、部門、役職、エリア)
- スコアリングによる評価(MAを活用したスコアリング)
リードクオリフィケーションに関する具体的な内容は、以下の記事をご覧いただきたい。
ステップ②:商談創出・受注
商談創出段階でマーケティングに求められる役割は、購買意欲の高いリードを適切に評価し、営業部門へ引き渡すことだ。
この段階では、各部門間の情報連携が非常に重要となる。
具体的には以下のような情報を漏れなく記録し、適時に共有する必要がある。
- リード獲得日
- リード獲得経路(例:Web広告、展示会)
- リード属性(例:企業情報、業界)
- リードナーチャリング活動履歴(例:メールマガジン配信内容、ダウンロードされたホワイトペーパー)
- 見込み客のアクション履歴・態度変容(例:セミナー/ウェビナー参加有無)
- ヒアリングしたニーズ、課題(例:インサイドセールスの架電内容)
- MQL化した経緯(例:MQL認定スコアリングの根拠)
- 営業コンタクト履歴
なお、万が一営業部門で商談化に至らなかった場合は、マーケティング部門へリード情報を戻し、リサイクルすることも忘れてはならない。
ステップ③:顧客維持
顧客維持の取り組みは、顧客獲得と同等に重要だ。
既存顧客の維持コストは新規顧客の獲得コストより低いため、BtoBビジネスにおいてはLTV(顧客生涯価値)の最大化が企業の成長を効率的に推し進めてくれる。
特にサブスクリプション型のビジネスを展開する企業では、解約率を低くし、長期的な顧客満足度を高めるために、さまざまな角度から提案やアプローチを行う必要がある。
そこで「顧客維持」段階の具体的なポイントをみていこう。
カスタマーサポートの充実
顧客の離脱を防ぎ、顧客との関係性を長期間にわたり良好に保ち続けるためには、カスタマーサポートを充実させる必要がある。
迅速かつ顧客に寄り添った対応、サポートチャネル(電話・メール・チャットなど)の拡充、適切な情報提供などを継続していくことで、顧客満足度の向上につながる。
また、顧客にとって最も身近な存在として、顧客の声を他部署へ共有することも、カスタマーサポート部隊の重要な役割だ。
アップセル・クロスセルによる価値提供
新機能の追加提供、顧客のニーズを先取りした追加サービスのアップセル・クロスセル提案によって、顧客との関係を深めるとともに、積極的に売上の拡大を狙える。
また必要に応じて、トレーニングや教育プログラムの提案も行う「カスタマーサクセス」に取り組むことで、顧客の定着につながるだろう。
定期的なコミュニケーション
顧客と定期的にコミュニケーションを取り、深い信頼関係を築くことが顧客維持に強く作用する。
例えば、製品のアップデート情報や新製品情報、各種サポート情報、サービスと親和性の高いノウハウなどを定期的に発信しよう。
自社からの発信に対する顧客のリアクションを見逃さないよう、MAやCRMなどで顧客の行動を把握しておくことも重要だ。
メルマガの開封やWebページへのアクセスが頻繁に行われていれば、クロスセルやアップセルの対象にできる可能性がある。
5.BtoBマーケティングの実践プロセス
ここまで読み進めて「これから実際にBtoBマーケティングへ取り組もう」と意気込んでも、実際は何から手をつけてよいかわからない方も多いだろう。
そこで本章では、実際にBtoBマーケティングに取り組む際のプロセスを解説していく。
- 市場分析
- 顧客理解
- ターゲット設定
- バリュープロポジションの設定
- マーケティング戦略の策定
以下で紹介するフレームワークは、BtoBマーケティングの分野でよく使われる有名な分析手法であるため、ぜひ活用してほしい。
プロセス①:市場分析
BtoBマーケティングは、市場分析からスタートする。
分析する内容は「顧客」「自社」「競合」「環境」の4つだ。
BtoBマーケティングを展開する企業が、市場を分析する際に役立つフレームワークを順番に解説していく。
分析内容 | フレームワーク |
顧客の分析 |
|
自社の分析 |
|
競合の分析 |
|
環境の分析 |
|
4C分析
4C分析とは、顧客視点に基づいた市場分析のフレームワークだ。
具体的には、以下の4つの構成要素を考察しながら、顧客の真のニーズを見極めていく。
<4C分析の構成要素>
構成要素 | 意味 |
Customer Value(顧客価値) | 顧客は製品・サービスに対してどのような価値を求めているのか? |
Cost(費用) | 顧客は製品・サービス価格、メンテナンス・サポート価格に対して納得しているか? |
Convenience(利便性) | 顧客は手軽に情報を入手し、困難なく購入できるか? |
Communication(コミュニケーション) | 顧客は役立つコミュニケーションを受けられ、製品・サービスを正しく理解しているか? |
4C分析では、上記4つの要素すべてが「顧客視点」に基づいて考察される。
ビジネスの基本は「顧客の役に立つこと」だ。
4つの視点から徹底的に顧客について分析する4C分析は、BtoBマーケティングにおいて欠かせない。
3C分析
3C分析とは、自社を取りまく外部環境と自社の状況を正しく理解するための分析手法だ。
自社の強み・弱み、顧客ニーズ、市場競争の状況を理解することで、他社との差別化を図りながら顧客への提供価値を確立し、効果的なマーケティング戦略を立案できる。
3C分析では、以下の3つの構成要素が分析対象となる。
<3C分析の構成要素>
- Company(自社分析・成長戦略・製品分析)
- Customer(ターゲット顧客・顧客ニーズ・顧客行動)
- Competitor(市場調査・競合他社比較・競争環境調査)
SWOT分析
SWOT分析とは、自社を取りまく内部環境や外部環境を明らかにし、マーケティングやセールスの戦略を決定するためのフレームワークだ。
以下の4つの構成要素から分析する。
<SWOT分析の構成要素>
- Strength(自社がもつ優れた点)
- Weakness(自社が劣っている点)
- Opportunity(市場や業界での成長の可能性)
- Threat(市場や業界での障害やリスク)
内部(自社)の弱みや外部の脅威を洗い出すことで、それらにどう対応すればよいかというリスク回避も可能となる。
プロセス②:顧客理解
2つ目のプロセスは、自社のターゲット顧客をより深く洞察し、正しく理解することだ。
プロセス①でも顧客理解のための分析を行ったが、ここからは顧客の「時系列的な行動や検討段階の変化」について掘り下げていく。
顧客を理解するために便利なフレームワークは、以下の2つだ。
<顧客理解に有効なフレームワーク>
- カスタマージャーニー
- マーケティングファネル
ターゲット顧客の解像度を高めるカスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーとは、顧客が自社の製品・サービスを購入するまでに辿るプロセスをモデル化するフレームワークを指す。
具体的には、自社製品・サービスの認知から始まり、情報収集、比較検討、購入までのフェーズを可視化する。
BtoBビジネスは、BtoCと比較して購買プロセスが長期間にわたることが一般的だ。
したがって、それぞれのプロセスにおいて顧客の心境変化、ニーズを洗い出しながら、カスタマージャーニーの各タッチポイントにおいて最適な打ち手を用意することが重要となる。
これを可視化して図示したものがカスタマージャーニーマップだ。
カスタマージャーニーマップの作成には以下のような効果が期待できる。
<カスタマージャーニーマップ作成の効果>
- 顧客に対する深い理解
- 適時・適切なコミュニケーション
- 社内の方向性共有
カスタマージャーニーマップの具体的な作成方法については以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてほしい。
ROI(投資対効果)を高めるマーケティングファネル
マーケティングファネルとは、見込み顧客の購買プロセスを可視化するモデルを指す。
BtoBとBtoCビジネスでは、顧客の態度変容(パーセプションチェンジ)が異なるため、まずはBtoB特有のマーケティングファネルを理解する必要がある。
上述したカスタマージャーニーと似ているモデルだが、最大の違いは「視点」だ。
カスタマージャーニーは顧客視点で購買行動を可視化する一方、マーケティングファネルは製品やサービスの提供者側の視点で顧客の購買行動を可視化する。
特にBtoBビジネスでは、購買意思決定の過程が組織的で仕組み化されているため、BtoCに比べてマーケティングファネルをモデル化しやすい。
モデルの構造を細分化することで、それぞれのフェーズの打ち手を最適化でき、結果としてROIの向上につながるのだ。
<マーケティングファネル作成の効果>
- 顧客に対する深い理解
- 見込み顧客の構造化による打ち手の検討
- ROI(投資対効果)の向上
なお、マーケティグファネルは進化を続けており、新たな派生モデルも登場している。
マーケティングファネルについてさらに理解を深めるには、以下の記事を参考にしてほしい。
プロセス③:ターゲット設定
ここまでのプロセスで対象市場やターゲット顧客の解像度が高まってきたはずだ。
続いてのプロセスは、より精緻なターゲット設定だ。
BtoBマーケティングでは、セグメンテーションによるターゲット市場の特定、ペルソナの活用によるターゲット顧客の精緻化が必要となる。
この際に便利なフレームワークが「STP分析」と「ペルソナ」の設定だ。
STP分析
STP分析は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つのステップを通じてマーケティング戦略を立案するフレームワークだ。
市場を細分化することで自社が狙うターゲット市場と顧客を特定し、競合優位性を保ちながら効率的な営業活動へとつなげていく。
<STP分析の構成要素>
- セグメンテーション:市場を細分化し、属性別に顧客をグルーピング
- ターゲティング:ターゲットとなる顧客グループを選定
- ポジショニング:選定した顧客グループに対して自社製品やサービスの価値を明確に伝える
ペルソナ
ペルソナとは、自社の製品・サービスを購入する可能性がある、または既に購入している企業の担当者や意思決定者の典型的なユーザー像(個人ペルソナ)、もしくは企業自体のイメージ(企業ペルソナ)のことだ。
個人ペルソナは、選定担当者や利用担当者の具体的なプロファイルを、企業ペルソナはその担当者が所属する企業や部署といった組織の特性を表す。
ペルソナによりターゲットを深掘りすることで、顧客のニーズや課題を深く理解でき、マーケティングの精度が向上する。
リアリティの高い顧客像ができあがるほど、見込み顧客に対するメッセージやコンテンツに強い訴求力を持たせることができる。
なお、顧客ニーズは市場の変化や時間の経過に沿って変化するため、ペルソナを定期的に見直す必要がある点に注意しよう。
プロセス④:バリュープロポジションの設定
ターゲット市場と顧客を設定したあとは「自社が顧客にどのような価値を提供するか」を明確にしていく。
自社の製品・サービスが顧客に提供する価値を可視化するのに有効なのが、バリュープロポジション(Value Proposition)というフレームワークだ。
具体的には、顧客のニーズと自社が提供できる価値のマッチング度合いやギャップ、競合他社が提供できない自社の価値を洗い出すことができる。
バリュープロポジションが明確であればあるほど、競合他社との差別化につながりやすく、競合優位性を確保できるだろう。
バリュープロポジションについて詳しくは、以下の記事を参考にしてほしい。
また、バリュープロポジションを顧客ニーズと詳細に照らし合わせて設定する「バリュープロポジションキャンバス」も有効なフレームワークだ。
プロセス⑤:顧客を起点としたマーケティング戦略の策定
最後に、ここまで紹介してきたフレームワークを駆使して実際に自社のマーケティング戦略を策定する手法を紹介する。
さまざまなフレームワークから導いた自社の方向性を漏れなくマーケティング戦略に反映させるには、4P分析が役に立つ。
さらに、この4P分析を利用する際に重要なのが「顧客起点」という考え方だ。
4P分析
4P分析は、製品(Product)、価格(Price)、場所(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの要素を最適化するためのフレームワークだ。
ターゲット市場に対し、自社製品・サービスを効率的かつ有効にアプローチするのに役立つ。
<4P分析の構成要素>
- 製品:製品やサービスの特性、品質、ブランド
- 価格:価格設定戦略、ディスカウント方針
- 場所:流通チャネル、物流、立地
- プロモーション:広告、販促活動、広報
4P分析の構成要素それぞれにおいて「顧客」に主眼を置いた施策となっているか、絶えず検証を繰り返す必要がある。
- 顧客が求めるニーズを満たした製品やサービスを提供できているか?
- 提供する価値に対して顧客が納得する価格設定となっているか?
- 顧客が購入しやすいチャネルを構築できているか?
- 顧客が正しい情報をほしいタイミングで入手できる環境が整っているか?
6.BtoBマーケティングが成功に近づく3つの実践ポイント
ここまでBtoBマーケティングの実践方法を解説してきたが、まだ足りない点がある。
ここからは、BtoBマーケティングがより成功に近づくためのポイントを解説していこう。
ポイント①:「SMARTの法則」による目標設定で成果につなげる
BtoBマーケティングにおいて、そもそもどのような目標を立てればよいか見当がつかないという企業も多い。
そこで役立つのが、効果的な目標設定を可能とする「SMARTの法則」だ。
SMARTの法則は、マーケティングに特化したものではないが、組織の目標設定に役立つ概念として知られている。
SMARTの法則とは
SMARTの法則とは、目標達成へのプロセスを具体的かつ明確にすることで、成功への確率を高めていく目標設定のフレームワークを指す。
以下の5つの基準からなり、各要素の頭文字から「SMART」の法則と呼ばれている。
S:Specitic(具体的に) | 目標が具体的であること。 |
M:Mesuarable(測定可能に) | 目標の達成度が数値などを用いて測れること。 |
A:Achievable(達成可能に) | リソースや過去の実績を基に達成可能な目標であること。 |
R:Relevant(関連的に) | 目標達成が組織の全体的な戦略やビジョンと関連性をもつこと。 |
T:Time bound(期限を決めて) | 目標に期限が設定されていること。 |
SMARTの法則を活用したBtoBマーケティングの目標設定例
では実際に、SMARTの法則をBtoBマーケティングの目標設定に当てはめて、具体例を作成してみよう。
<Specitic(具体的に)>
第1四半期のMQL創出件数を月間90件とする
<Mesuarable(測定可能に)>
チャネル別リード獲得目標数を設定する
<Achievable(達成可能に)>
LP経由の年間コンバージョン件数が前年比+15%となるよう目標設定する
<Relevant(関連的に)>
国の法制度改正に合わせたシステム導入検討顧客を創出する
<Time bound(期限を決めて)>
四半期単位でリード獲得数、商談数、受注獲得数の目標を設定する
ポイント②コンテンツマーケティングで精度の高い見込み顧客を創出する
BtoBマーケティングでは、質の高いコンテンツマーケティングも重要だ。
コンテンツマーケティングとは、ターゲットとなる顧客に対して価値ある情報やコンテンツを提供し、興味・関心を引きつける手法を指す。見込み顧客のエンゲージメントを高めることで、最終的な売上獲得につなげていく。
詳細は、以下の記事で詳しく解説している。
コンテンツマーケティングは、費用をかければ一定数の露出が得られるWeb広告と比較して、コンテンツ制作にリソースが割かれ、即効性も確約されていない。
一方で、専門性や実績を蓄積し、それを反映させた高品質なコンテンツを制作すれば、広告費用をかけずともコンテンツ自体がリードマグネットとなり、効率良くリードを獲得できるようになる。
さらに、上述したカスタマージャーニーやマーケティングファネルといった各モデルのステージごとに、顧客ニーズにマッチした良質なコンテンツを提供できれば、顧客エンゲージメントの強化にも貢献する。
リソースは必要だが、蓄積されれば大きく強力な集客基盤となるため、ぜひ地道に取り組んでいただきたい。
コンテンツマーケティングの実践的な手法や活用できるツールについては、以下の記事を参考にしてほしい。
ポイント③:目的と役割を明確化し部門間連携を深める
BtoBマーケティングの運営においては、各部門間の連携体制が重要となる。
なぜなら、BtoBビジネスは認知から顧客獲得までのプロセスが複雑でリードタイムも長期にわたるため、複数部門でアプローチやフォローを行う必要があるからだ。
全体の目標を定め、それに応じて各部門での目的と役割を明確にし、同じ方向へ向かって顧客獲得活動に取り組む必要がある。
関与するのは、マーケティング部門・インサイドセールス部門・営業部門だけではない。
新機能開発やサービス改善には開発部門との連携、顧客エンゲージメント向上にはカスタマーサポート部門との連携など、あらゆる部門の連携が重要だ。
定期的なMTGやデータ統合ツールの活用などにより、情報共有を活発に行っていこう。
7.BtoBマーケティングを効率化するツール
BtoBマーケティングに取り組むなら、ツールの導入は欠かせないだろう。
オンライン施策が主流となっている現代のマーケティングでは、インターネット上のデータを最大限に活用する「データドリブンマーケティング」が求められるためだ。
具体的には、ツールを活用してリードの情報を管理、分析したり、メルマガ配信、リードのスコアリングなどを自動化したりできる。
中でも、一般的なBtoBマーケティングではCRMツールとMAツールがおすすめだ。
以下で詳しくみていこう。
7.1.CRM(Customer Relationship Management)
CRMとは、Customer Relationship Managementの略称で、顧客のデータを一元管理するシステムだ。
扱えるデータは多岐にわたる。
自社が持つ顧客の属性情報やWeb上の行動履歴、コンタクト・アプローチの履歴など、複数のデータを一つのシステムで管理できる。
マーケティング活動だけでなく、営業の商談履歴やカスタマーサポートの履歴などを記録できるため、BtoBマーケティングのプロセス全てをカバーし、各部門間での情報共有も活発になる。
リード情報の登録・保管・分析といった一連のプロセスすべてを、デジタルで管理する仕組みを構築すれば、各部門間のリアルタイムな情報共有が可能となる。
<CRM導入のメリット>
- 獲得リードを一元管理できる
- リードの状態を可視化して簡単に共有できる
- リードの再利用が容易となる
7.2.MA(Marketing Automation)ツール
MAとは、Marketing Automationの略称で、リードジェネレーション・リードナーチャリング・リードクオリフィケーションのプロセスを自動化するツールだ。
具体的には、リードに対するステップメールの自動配信、特定トリガーを設置したシナリオ作成、リードスコアリングなどを自動化できるため、人的リソースの削減や業務の効率化、効果の最大化につながる。
さらに、MAはCRMと連携できるものが好ましい。
CRMに蓄積された顧客データを活用することで、MAでのターゲティングや施策の精度向上につながるためだ。
<MAツールの効果>
- CRMと連動した見込みリードの管理が容易となる
- シナリオ設定によりリードナーチャリングを自動化できる
- スコアリング機能によりリードクオリフィケーションを自動化できる
8.まとめ
BtoBビジネスはBtoCビジネスと異なり、見込み顧客の購買意思決定にさまざまな要素が絡み合う。
購買意思決定までのリードタイムが長期にわたるため、ターゲット顧客と長期的な視点で良好な関係を構築していく必要がある。
BtoBマーケティングでもっとも重要なのは、正しい顧客理解と顧客起点のマーケティング施策の運用だ。
多面的なマーケティング戦略の策定と各関係部門の緊密な連携、PDCAサイクルの構築といった絶え間ない努力が必要となる。
本記事で解説してきた施策を網羅的に実施し、BtoBマーケティングの基盤を整えていこう。