オウンドメディアは、業界業態を問わずマーケティングの主要なツールだ。
特にコンテンツマーケティングが一般化してからは、オウンドメディアへの投資が必須といえる状況にある。
一方で、
「コンテンツマーケティングでのオウンドメディアの位置付けがわからない」
「オウンドメディアを活用したコンテンツマーケティングの戦略の立て方を知りたい」
などの疑問や課題を持つ方も多い。
オウンドメディアは「作って終わり」ではなく、運用においてもノウハウが必要である。
そこで本記事では、コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの位置付けや成果を出すための活用方法を詳しく解説していきたい。
1. コンテンツマーケティングとオウンドメディアの関係性
まず、オウンドメディアの定義とコンテンツマーケティングにおける位置づけを確認しておこう。
1.1.オウンドメディアとは
オウンドメディアとは、企業が自ら保有・管理するメディアの総称だ。
オウンドメディアの特徴は、企業がコンテンツの制作と配信を直接コントロールできる点にある。
インターネットやスマートフォンの普及により、ユーザーは自ら進んで情報を集めるようになった。
こうした情報ニーズの受け皿として「検索ユーザーの情報ニーズを満たす独自のメディア」への需要が高まり、オウンドメディアの隆盛につながったといえるだろう。
そんなオウンドメディアは「ブランドイメージの強化」「顧客との信頼関係構築」などの目的をもつ。
一方、近年では直接的に売り上げに貢献する仕組みとして、ECや広告との連携を強化する動きも見られる。
1.2.オウンドメディアの一般的な構成
オウンドメディアは「ブログ調の記事コンテンツ」「ノウハウ提供系の資料コンテンツ」「SEO対策としてのコンテンツ」などで構成される。
具体的には、テキスト主体の「記事コンテンツ」や「動画コンテンツ」「ホワイトペーパー」「記事LP」などで構成されることが多い。
1.3.コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの位置づけ
コンテンツマーケティングとオウンドメディアの関係は「戦略と戦術」に相当する。
コンテンツマーケティングという戦略があり、そのなかの戦術としてオウンドメディア活用があるイメージだ。
また、オウンドメディア活用ではSEOも考慮した施策が一般的である。
SEOはデジタルマーケティングの一部であり、主に集客のために実施される。
近年では、コンテンツマーケティングとセットで行われることが多く、2つの融合点は「コンテンツSEO」と呼ばれている。
コンテンツマーケティングとSEOの関係については、こちらの記事を参考にしてほしい。
2.コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの役割
次に、コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの役割を具体的に見ていこう。
コンテンツマーケティングとは「コンテンツによって売れる仕組みを作ること」であり「集客」「リードジェネレーション」「ナーチャリング」の3つが主な役割だ。
さらに3つの役割は、オウンドメディアで用いられるさまざまなコンテンツが担っている。
ここからは、役割別にオウンドメディアのコンテンツを整理していきたい。
役割1.集客
オウンドメディアにおける集客を担うのが「記事コンテンツ」だ。
また、記事コンテンツのなかでも「トレンド解説記事」や「用語解説記事」「事例紹介記事」などは集客効果が高いとされている。
- トレンド解説記事
最新のビジネストレンド・法改正・市場の動向など、ビジネスにおけるインパクトや話題性を重視した記事 - 用語解説記事
製品やサービスに関連する専門用語や業界用語を明確に説明した記事 - 事例紹介記事
実際の製品導入事例やサービスの適用事例に焦点を当てた記事
これらは検索キーワードに紐づけて制作しやすく、検索流入の増加が期待できる。
具体的には、上位表示を狙いやすい検索キーワードをピックアップし、各キーワードをテーマに盛り込んだ内容にすることで、数か月~1年単位の中長期で集客能力の向上を狙っていく。
Web広告よりも長期的な効果が見込める
オウンドメディアによる集客は、ペイドメディアよりも長期的な効果が期待できる点がメリットだ。
例えば、オウンドメディアと比較されるペイドメディアとして「Web広告」がある。
Web広告による集客は即効性が高い一方で、チューニングを誤るとまったく効果が得られないおそれがある。
また、Web広告は蓄積される「資産」ではないため、効果を得られない場合は純粋な「コスト」になってしまうだろう。
一方で、オウンドメディアの集客に使われる記事コンテンツはストック型の資産であり、メールマーケティングをはじめとした、さまざまな施策に活用できる。
オウンドメディア単体で狙い通りの効果を得られなかったとしても、完全に無駄になることはない。
役割2.リードジェネレーション
リードジェネレーションの役割を担うのは「記事コンテンツ」や「ホワイトペーパー」だ。
リードジェネレーションとは「氏名」「メールアドレス」「電話番号」といった見込み客情報を入手すること。
こうした情報を獲得するには、記事コンテンツのみでは不十分である。
記事コンテンツから、より詳細かつ有益な情報を含むホワイトペーパーへと誘導し、ホワイトペーパーをダウンロードするための入力フォームでの獲得を目指していく必要がある。
記事コンテンツの種類としては「ノウハウ解説記事」「事例紹介」「インタビュー記事」などが該当する。
また、ホワイトペーパーは「調査レポート型」「ノウハウ提供型」「課題解決型」などが適しているだろう。
実際の活用イメージは以下のとおりだ。
- ノウハウ解説記事で集客し、ノウハウ提供型ホワイトペーパーへ誘導
- 事例紹介記事で集客し、課題解決型のホワイトペーパーへと誘導
- 調査レポート型のホワイトペーパーで、集客とリードジェネレーションを同時に狙う
費用は常に一定
Web広告やSNS広告といったペイドメディアによるリード獲得に比べると、オウンドメディアは費用の変動が小さい。
そのため、ダウンロードされやすいホワイトペーパーを制作できれば、費用面で非常に効率が良い施策となる。
ただし、こちらもペイドメディアのような即効性は期待できないため、短期間での効果を狙うのであれば、ペイドメディアとの組み合わせが必要だ。
「広告やDMからホワイトペーパーへ誘導する」など、オウンドメディアとペイドメディアのコンテンツを組み合わせながら、リード獲得を目指していくとよいだろう。
役割3.ナーチャリング
ナーチャリングに活用するコンテンツは「ホワイトペーパー」と「動画コンテンツ」が主体だ。
BtoBビジネスの特性上、ナーチャリングのためには専門性が高く精密な情報提供が必要とされる。
必然的に、長期的なスパンで情報を提供し続けなければならない。
オウンドメディアでは、検索流入を狙うコンテンツと、専門的かつ精密な情報をするコンテンツを別に用意し、各コンテンツを周回させることでナーチャリング効果を狙っていく。
メルマガとの組み合わせでリードクオリフィケーションも
さらに、メルマガとの組み合わせによって効果を高める方法もある。
メルマガとオウンドメディアの組み合わせでは、リードナーチャリングのみならずリードクオリフィケーション(選別・評価)も可能だ。
例えば、オウンドメディアのコンテンツへ誘導するメルマガを定期的に配信するとしよう。
毎回必ず開封し、誘導先のリンクもクリックするユーザーと、一度も開封しないユーザーでは、前者の方が確度が高いと評価できるだろう。
ナーチャリングのでのメールの活用については、こちらの記事でより詳しく解説しているため、参考にしてほしい。
3.コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディア運用のポイント
このように、コンテンツマーケティングにおいては「集客」「リード獲得」「ナーチャリング」それぞれで、どのコンテンツをどのように組み合わせるかが重要だ。
ここでは、より効果を高めるための運用ポイントをみていこう。
ポイント1.資産化を意識して質を上げる
オウンドメディアの特性は「ストック型」という点に集約される。
オウンドメディアには、ペイドメディアのように即効性が高く「パルス消費(瞬間的な消費行動)」を促す効果はない。
一方で、コンテンツを蓄積していくことで資産価値が高まり、継続的に効果を生みだしやすくなるのが強みだ。
資産化されたコンテンツは、継続的にユーザーから評価されるための原資となる。
したがって、過度に集客効果を狙うよりも「内容(質)」にこだわった運用が適しているだろう。
コンテンツの質を高めるためには、以下のような施策が有効だ。
- ペルソナとジャーニーの設計
- 潜在ニーズの把握と可視化
- 検索エンジンに対するアピールと人に評価される部分を両立させる
まずは必ずコンテンツ作成のターゲットを定め、そのターゲットが何を課題として、どのような情報を求めているのかについて深く洞察する。
ターゲットが持つ課題や悩みに答え、さらに潜在的なニーズを満たす期待以上のコンテンツを制作することで、良質なコンテンツにつながるだろう。
ただし、オーガニックでの流入を増やし、集客やリード獲得を狙うのであれば、検索エンジンに対する情報提供(適切なタグや構造化データの提示など)や、評価基準に沿った対策も欠かせない。
3.2.他の施策とのシナジーを意識する
以下の図が示すとおり、コンテンツマーケティングはデジタルマーケティングの一種と考えられる
ウェビナーやプレスリリース、Web広告といったほかのデジマ施策と連動させることで、マーケティング施策全体の成功に寄与するだろう。
他の施策を組み合わせると、一般検索以外からの流入が増えるというメリットがある。
例えば、以下のような組み合わせだ。
- SNS広告経由でホワイトペーパーを配信する
- ウェビナー後にウェビナーレポートを配信する
- プレスリリースに合わせてオウンドメディアのコンテンツを充実させる(直接流入アップ)
これにより、全体的な流入量が増えればオウンドメディア全体の評価が高まり、リード獲得やナーチャリングにも良い影響を与えるだろう。
4.MAとの併用で顧客行動の可視化も
コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの活用においては「顧客行動を可視化しにくい」という点が課題になりやすい。
これはオウンドメディアの弱点でもある。
ペイドメディアやアーンドメディアは、広告からの流入量や口コミの総量などによって、顧客行動を可視化しやすい点が特徴だ。
一方、オウンドメディアは「アクセス数」は把握できていても、オウンドメディア単体ではそれ以外の行動を把握することが難しい。
顧客行動が把握できないと、ナーチャリングの先にある「リードクオリフィケーション(評価と選別)」が困難となる。
つまり「将来的に有望な見込み客」が見えにくくなってしまうのだ。
この点を補強するツールとしてMA(マーケティングオートメーション)がある。
MAツールで優先顧客を可視化
一般的なMAツールでは、以下の機能が搭載されている。
- リードの一元管理機能(リードマネジメント機能)
- メール配信機能
- Web広告連携
- スコアリング機能
「スコアリング機能」を用いることで、オウンドメディアの弱点を補強することが可能だ。
ツールにもよるが、どのユーザーがどのコンテンツにアクセスしているかを計測し、それをもとにスコアリングを行える。
また、PDF形式で公開されたWeb上のホワイトペーパーであれば「何ページまで読んだか」「何分アクセスしたか」までを計測できるMAツールもある。
こうした顧客行動の把握は、オウンドメディアのみでは実現が難しい。
MAツールを導入するには費用が発生するものの、ナーチャリングやリードクオリフィケーションを行うためにもMAツールは不可欠といえるだろう。
5.まとめ
この記事では、コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの位置づけや役割、活用方法などについて解説してきた。
コンテンツマーケティングとオウンドメディアは「戦略と戦術」のような関係にある。
また、ほかのデジタルマーケティング施策とのシナジーを考慮しながら、継続的に質を向上させていくことで、成果につながりやすくなるだろう。
一方で、オウンドメディアの新規立ち上げや改修には多大な労力とノウハウが必要だ。
もし社内にオウンドメディア構築と活用のノウハウがない場合は、外部企業のサービスを活用することも検討してみてほしい。